ソウルミステリー~その地名に秘められた謎にせまる

 韓国語の勉強はまず、母音と子音を押さえるところから始まりますが(どの言語も同じですけど・・・)、子音の「ㅅ(シオッ)」のところに来ると、どの参考書も「서울 ソウル(都)」といった感じ。

 韓国語の超初級者の頃は、서울は大韓民国の首都のことね・・・ぐらいで通り過ぎてしまうんですけど、中級者ぐらいになってくるとハングル文字があまり苦にならなくなってテキストが辞書なしでもある程度読めるようになってくると、少々図々しくなってくるのと、歴史好きということもあって、「서울」=首都では納得がいかない!!

 韓国語を勉強するまでは、日本と同じ漢字文化圏であったとはつゆ知らず(大変遺憾であると・・・)。でも勉強を進めていくうちに、韓国語には漢字語がたくさん入っていることに気づきだす。それなら、ソウルだって漢字で表記すればいいのに。

 そう2005年1月から、ソウルは「首爾」と中国語表記をするようになったのです。ところで中国語でどう発音するんでしょうか。ピンイン表記は「shǒu ěr」で、「ショウアル」。Microsoft Speech SDK 5.1で聞いてみたら、「昭和」、「ショワ」なんて聞こえましたよ。

 地名には必ず由来というものがありますよね。とつぜん突拍子もない名前を付けるということはないと思うんです(南セントレア市は別として・・・笑)。う~ん、なんだろうと日本語で考えていても仕方がないので、直接韓国のサイトを当ってみましょう。

 ソウル特別市(서울특별시)のサイトにありました「서울지역 이름의 유래(ソウル地域 名前の 由来)」から少々引用させていただきます。括弧「()」内はわたしのつたない日訳です。

 서울의 어원에 대해 정확히 밝혀기는 어려운 일이고 지금도…

 (ソウルの語源についてきちんと説明するのは難しく、現在も…)

 韓国の方も頭を悩ましているようですね。でも昔からの言い伝えのようなものがあるようです。日本でも地名譚がどこの町や村にも存在しますよね。

 『삼국사기(三國史記)』에 의하면 신라 시조 혁거세(赫居世)왕이 나라를 세우고 이름을 서나벌(徐那伐)이라 하였으며, 『삼국유사(三國遺事)』에는 신라 시조 혁거세왕이 건국 후에 나라 이름을 서나벌, 서벌 혹은 사라(斯羅), 사로(斯盧)라 하였다고 기록되어 있습니다.

 (『三国史記』によると新羅の始祖ヒョクコセ(赫居世)王が国を建て国名をソナボル(徐那伐)、『三国遺事』には新羅の始祖ヒョクコセ王が建国後、国名をソナボル、ソボルあるいはサラ(斯羅)、サロ(斯盧)といったとそれぞれ記録されています)

 ここから韓国語の固有語(日本の大和言葉のような感じかな)で首都を意味する「ソウル」がきているんではと、考えられているんですね。

 でも、なんだか歯切れの悪い感じがしないでは・・・。

 豊田有恒さんの本「歴史から消された邪馬台国の謎」を読んでいたら、新羅に関する興味深い部分を発見!!

 新羅の上層部は、朴、昔、金の天孫三姓と、李、崔、孫、鄭、裴、薛の六土姓との二重構造になっていた。このことから、一種の征服王朝ではなかったかという疑問が提示されている

 ちなみに各姓のハングル表記は、朴(박)、昔(석)、金(김)、李(이)、崔(최)、孫(손)、鄭(정)、裴(배)、薛(설)。あれ、もしかして冬のソナタ(겨울연가)、太王四神紀(태왕사신기)でおなじみのヨン様こと裴勇俊(배용준)さんは、新羅系韓国人(!?)

 天孫とは日本人でもお馴染みの言葉。どこか他の土地から、新羅という土地へやってきた可能性が高いわけですね。そうなんです、そのカギを解くキーマンがいるんです。その名は・・・

 昔脱解(석탈해・ソクタルヘ・ソッタルヘ)

 第四代の新羅国王である彼が漏らしたこの言葉・・・(「PUSAN navi」からちょっと引用させていただきます)

 この土地はもともと私の先祖のものなので返してください。私の先祖はこの土地に長く住んでおり、わずかの間他の国に出ただけです。先祖はここで鍛冶屋を営んでいました。

 鍛冶屋さん、つまり鉄を扱っていたんだ。鉄と言えば、この地方は古代辰韓(진한)といって鉄がたくさんとれた場所。鉄を韓国語では「쇠」・「철」といいますが、古代はどういっていたか。こちらのサイト「WoW! Korea ウィキペディア」によると、新羅語のところに・・・

 so("gold")

 so(そ)と書いてありますね。鉄ではなくてgold(金・ゴールド)のことですが、韓国のサイト「NAVER」の辞書で「쇠」を調べてみると、鉄を意味するだけでなく、金属の総称とも出ていますので、鉱物資源を広い意味で「so」と捉えても問題はないんじゃないかと。

「WoW! Korea ウィキペディア」のサイトをそのまま下にスクロールしていくと、「land」が出てきます。新羅語では「no」・「buri」。その少し下の項目を見ると「capital's names」で「sərabəl səbəl」と書いてありますね。まさに「ソラボル ソボル」と発音できます。

 ソラボルを英語では「Land of Gold」ということになるのかな。それから「携帯ウィキペディア」のサイトを見てみたら、この「Land of Gold」を意味する都市が、それも発音が似ている「sonapur」で載ってましたよ。これはビックリ!!

 Sonapur, literally, Land of Gold in Hindi and Urdu, …
 
 (ソナプルは文字通り、ヒンディー語とウルドゥー語で金の国を意味し…)

 色々な都市名が並んでいますが、注目したいのはこちら・・・

 Sonepur district, a district in the Indian state of Orissa

 インド南東部に位置する、オリッサ州(Orissa)。「Wikipedia」で調べてみると・・・

 鉄鉱石を初めクロムや石炭などの鉱物資源が豊富に存在することが判明するやいなや、アルセロール・ミッタルなど大手製鉄企業が進出してきた。

 鉱物資源の宝庫なのです。そして、新羅もその昔はそうでしたよね。

 この地方は古代、カリンガ国があった場所。カリンガ国を「Wikipedia」で調べてみると・・・

 カリンガ国は強大な海洋王国であり、スリランカやミャンマー、タイ、ベトナムなどの東南アジアと、海路による交易が盛んであった。スリランカ、ミャンマー、インドネシアには、カリンガ人の集住区も存在していた。マレーシアでは現在でも、インド人のことを「カリング」と呼ぶ

 そして言語の面から見てみると・・・

 カリンガ文字は、ブラーフミー文字から派生したもので、カリンガ国において用いられていた。この文字は、ドラヴィダ語族の言語の一種を表記するために使われていたと考えられ、したがってカリンガ国においては、ドラヴィダ語族の言語の勢力が強かった可能性がある

「ドラヴィダ語族」で思い浮かべるのが、タミル語。大野晋さんの著書「日本語の起源」で一躍有名になりましたが、真偽のほどはさておき、古代インド方面との交流が東アジアで行われていてもおかしくないんじゃないかと。新羅の南に加羅(伽耶)国という国が存在しましたが、そこに王様・首露王は・・・

 首露王(しゅろおう、수로왕)は、金官加羅国の始祖と伝えられている韓国(朝鮮)の伝説的な王であり、金海金氏の始祖。首露王は158年間国を治めたと伝えられている。妃はインドの阿踰陀国の王女と伝わる許黄玉(金海許氏の始祖)。(Wikipediaより)

 妃がインドの国の王女様とはっきり書いてありますものね。韓半島はインドとの交流はあったわけです。新羅でも昔脱解は竜城国(多婆那国)で生まれて、流れ着いたのが辰韓とのこと。竜城国(多婆那国)は日本ではないかと言われていますが、その当時というのかずっと以前、先史の上では、文明の高さからいくとインドのほうが先進地域ですよね。ですから、竜城国(多婆那国)はインド地域の国じゃないかと・・・。

 ソウルという地名は、なにかこう古代悠久のロマンを感じさせる、そんな魅力的な響きのある神秘的な・・・、う~ん一度はこの目で見てみたいなあ。

 古代ロマン漂う、ソウル。予備知識いっぱい頭に入れて旅行をすると、きっと楽しい時間が過ごせるのではないのかな。昼間は博物館めぐり、夜は本場のキムチと焼き肉(불고기)を肴に焼酎(소주)で一杯、グルメ三昧。なんだか、興奮してきちゃったぞ!!